3.11から始まった長い闘い: 福島第一原発事故と廃炉への道のり
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波により、福島第一原子力発電所で深刻な原子力事故が発生しました。この事故は1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故以来、最も深刻な原子力事故となりました。福島第一原子力発電所は地震発生から約50分後に大きな津波に直撃され、原子炉の冷却に必要な電源や設備が損傷しました。原子炉内の燃料が溶融し、水素爆発などが発生し、放射性物質が大気中や土壌、海洋に放出されました。この事故により、福島県内の一部地域は避難対象地域となり、帰還困難区域も設定されました。現在は廃炉作業が進行中で、完了予定は2041年から2051年頃です。
【記録動画】津波が襲来する福島第一原発(2011年3月11日)
【記録動画】爆発した福島第一原発
【ライブ映像】福島第一原発の復旧工事
東京電力が設置している福島第一原発の1号機・4号機⇒ライブ映像
福島第一原発から排出される処理水で飼育されているヒラメ⇒最新LIVE映像
【時系列】福島第一原子力発電所1号機の水素爆発
地震発生~緊急停止
2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖地震が発生。
1号機は設計通り、地震発生と同時に制御棒が挿入され、原子炉は自動緊急停止。
津波襲来~全電源喪失
地震により外部電源喪失。非常用ディーゼル発電機が自動起動し、非常用復水器による炉心冷却開始。約50分後、津波が襲来。 非常用ディーゼル発電機、バッテリー、電源盤などが浸水し、全電源喪失。これにより、非常用復水器、高圧注水系など、全ての冷却機能が喪失。監視・計測機能も喪失し、原子炉の状態確認が不可能となる。
炉心損傷~水素爆発
電源喪失から約4時間後、冷却機能停止により圧力容器内の水が蒸発し続け、燃料棒が水面から露出。炉心損傷が始まる。露出した燃料棒の温度が上昇し、水蒸気と反応して大量の水素が発生。水素は格納容器の損傷部から原子炉建屋内に漏れ出し、上部に溜まり、3月12日15時36分、何らかの原因で引火、水素爆発を起こす。
溶融炉心の落下
溶融した炉心は圧力容器の底を貫通し、格納容器の床面のコンクリートを侵食。
事故の原因
最大の原因は津波による浸水。 想定をはるかに超える津波により、電源設備や冷却設備が浸水し、機能喪失に陥ったことが、事故の根本的な原因。特に、非常用ディーゼル発電機の位置が低く、津波への対策が不十分であったことが、全電源喪失に繋がった。また、水素爆発を防ぐための対策も不十分であり、爆発により建屋が損傷し、その後の対応が困難になった。
【時系列】福島第一原子力発電所2号機の放射性物質の放出
地震発生~緊急停止
2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖地震が発生。2号機は設計通り、地震発生と同時に制御棒が挿入され、原子炉は自動緊急停止。
津波襲来~電源喪失
地震により外部電源喪失。非常用ディーゼル発電機が自動起動し、原子炉隔離時冷却系も起動。約50分後、津波が襲来。 非常用ディーゼル発電機、バッテリー、電源盤などが浸水し、全電源喪失。 しかし、津波襲来前から稼働していた原子炉隔離時冷却系が機能を維持し、約3日間注水を継続。
原子炉隔離時冷却系停止~炉心損傷
3月14日、原子炉隔離時冷却系が停止。電源喪失後、水没を免れた電源盤に電源車を接続し、他の冷却系統での注水準備を進めていたが、1号機の水素爆発(3月12日)の影響でケーブルが損傷し、電源車が使用不能となる。また、3号機の水素爆発(3月14日)により、準備していた消防車とホースも損傷し使用不能となる。原子炉隔離時冷却系停止後、低圧注水系への切り替えのために減圧を試みるも、時間がかかり、その間に圧力容器内の水位が低下し、炉心損傷が発生。同時に水素も発生。
水素爆発の回避と放射性物質の放出
炉心損傷後の圧力容器や格納容器の損傷により、水素や放射性物質が原子炉建屋内に漏洩。
しかし、2号機では1号機の水素爆発の衝撃で原子炉建屋上部側面のパネルが開いていたため、水素が外部へ排出され、原子炉建屋の爆発は回避。一方で、ベント(格納容器内の圧力を下げる操作)に失敗したため、格納容器から直接放射性物質を含む気体が漏洩し、1~3号機の中で最も多くの放射性物質が放出されたと推定される。
事故の原因
2号機も津波による浸水が最大の原因。 想定を上回る津波により、電源設備や冷却設備が浸水し、機能喪失。原子炉隔離時冷却系は約3日間機能したものの、電源復旧が遅れたことが、炉心損傷に繋がった。1号機や3号機の水素爆発の影響で、2号機への対応が遅れたことも、被害拡大の一因となった。
【時系列】福島第一原子力発電所3号機の水素爆発
地震発生~緊急停止
2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖地震が発生。3号機は設計通り、地震発生と同時に制御棒が挿入され、原子炉は自動緊急停止。
津波襲来~交流電源喪失
地震により外部電源喪失。非常用ディーゼル発電機が自動起動し、原子炉隔離時冷却系も起動。
約50分後、津波が襲来。 非常用ディーゼル発電機は浸水し、交流電源は全て喪失。しかし、直流電源設備は1、2号機より高い位置に設置されていたため浸水を免れ、機能を維持。 これにより、原子炉隔離時冷却系と高圧注水系は動作を継続。計器類による原子炉の状態監視も継続できた。
高圧注水系停止
約1日半後、低圧注水系への切り替えのため、高圧注水系を停止。
しかし、減圧操作に時間がかかり、その間に圧力容器内の水位が低下し、炉心損傷が発生。同時に水素も発生。
水素爆発
減圧確認後、消防車による注水を開始したが、格納容器から漏洩した水素により、3月14日11時01分、原子炉建屋で水素爆発が発生。
事故の原因
3号機も津波による浸水が最大の原因。 非常用ディーゼル発電機が浸水し、交流電源を喪失したことが、事故の起点となった。直流電源が確保された点は1、2号機と異なるが、高圧注水系停止後の減圧操作に時間がかかったことが、炉心損傷に繋がった。
【時系列】福島第一原子力発電所4号機の水素爆発
地震発生時、4号機は定期検査中で、運転を停止しており、原子炉の燃料は全て使用済燃料プールに取り出されていました。津波による全電源喪失で、使用済燃料プールの除熱機能も注水機能も失われ、蒸発による使用済燃料プールの水位低下が懸念されていました。また、3月14日午前4時8分の段階で、使用済燃料プールの水温は84度であることを確認し、燃料上端まで水位が低下するのは3月下旬と予想していました。このため、対応にはある程度の時間的余裕があると確認していましたが、3月15日午前6時14分頃、4号機の原子炉建屋で水素爆発が起こりました。この原因は3号機の格納容器ベントに伴い、水素を含むベントガスが排気管を通じて4号機に流入したためと推定しています。